
江之浦の家
神奈川県小田原市江之浦の住宅です。夫妻と犬2匹、猫3匹が暮らす質実な空間を計画しました。
江之浦は相模湾に面した海沿いの地域で、背後には箱根外輪山の一部が連なり急峻な斜面が多いのが特徴です。山と海が近接しており、独特な景観を形成しています。敷地はアプローチからの高低差があり、眺望がよい反面、崖地への対応が求められました。具体的には、相模湾への眺望、自然災害への備え、ペットたちと豊かに暮らすこと、住み始めてから整備する段々畑との繋がりが課題でした。
関東大震災で分からなくなっていた敷地境界を確認することから、今回の家づくりは始まりました。敷地中央に走っていた畦畔(けいはん)と呼ばれる国の所有の道の払い下げも実施。市街化調整区域にあるため開発審査課とのやりとりも行った上で、既存家屋を建て替えました。
建物は大雨や土砂災害への配慮、相模湾への眺望を確保するため、建物は擁壁に対して角度を振りつつ、居住スペースは上階とすることに。切妻形の平屋をグッと持ち上げたような佇まいとしました。東側に相模湾、北側にみかん畑を眺めつつ、ワンフロアで生活が完結し、夫妻が暮らしやすいように計画しました。これから開墾していく段々畑へは、高低差を生かして上階台所から出入りできます。下の間というピロティ空間を中心に8の字状のドッグランを計画。建物奥には猫のための部屋を設け、上下の吹き抜けや窓辺からの景色も楽しめます。
今回の家づくり、夫妻が塗装や板塀づくりなど、ご自身でできることは積極的に手を動かされていました。ものづくりが好きで器用なこともあり、楽しみながら作業をされていたのが印象的でした。段々畑の開墾など、家づくりの楽しみはしばらく続きそうです。
所 在 地 | 神奈川県小田原市江之浦 |
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用 途 | 住宅 |
工 種 | 新築 |
構 造 | 木造2階建 在来工法 地盤改良+布基礎 |
敷地面積 | 242㎡(73坪) |
建築面積 | 50㎡(15坪) |
延床面積 | 90㎡(27坪) |
工事費 | 2000万円台中盤 |
設計監理 | 後藤智揮(後藤組設計室) |
構造設計 | 村田龍馬(村田龍馬設計所) |
施 工 | 山田臣悟(現場監督) 新坂千代松(大工) (有限会社山田建業) |
設計期間 | 2023年2月-2024年2月 |
施工期間 | 2024年3月-2024年12月 |
ごも日記 | 「江之浦の家」編 |
仕様概要 | Ua値 0.63 耐震等級3相当 屋根:ガルバリウム鋼板+通気層+スタイロフォーム3種B100mm(屋根断熱) 外壁:上階:杉板(下階:モルタル塗り)+通気層+高性能グラスウール105mm(充填断熱) 内壁:土しっくい塗(一部 AEP塗装) 床 :カラ松、基礎:スタイロフォーム3種Bt=75mm(基礎断熱) 暖房:温水式ファンコンベクター |
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ドローイング。相模湾が望めるみどり豊かな環境。西側は段々畑にする予定。
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平屋を持ち上げたような佇まい。上階は焼杉板貼、下階はモルタル塗り。
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西側。勝手口から将来の段々畑へと出入りできるようにした。
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大屋根とし、軒は深く張り出している。
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上の間。相模湾を一望できる開放的な空間とした。
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上の間に面した寝室とWIC。
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上の間と寝室は引き戸で視線を遮ることもできる。
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窓下には温水式のファンコンベクターと収納スペースを設けた。
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台所。コールドテーブルと作業台は高さを揃えた。左は段々畑に出られる勝手口。
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寝室の窓からの景色。みかんの樹々越しに横浜などが見える。
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建物中央に計画した下の間。幅4.5mの半屋外空間。
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日常的に外構と連続したドッグランスペースになるほか、防災の役割も担う。
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上の間の窓辺に集まるワンコたち。
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吹き抜けを介して寝室とつながる猫部屋。
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1/50の断面模型。
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1/50の軸組模型。幅4.5mの下の間を実現するため、2本の集成梁を架けた。
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(左)猫部屋上部の吹き抜け (中)吹き抜けに面した寝室 (右)こだわりの洗面脱衣室